心のビン

「お兄ちゃん」


妹のくまみは、浜辺で何かを見つけたようで、こっちに持ってきた。

それは俺たちが初めてぐるみぃになって、初めての場所に行ったことの話。


くまみが見つけたのは俺たちよりも小さなビン。

割れているわけでもなく汚いわけでもない綺麗なビン。

水色で透き通ったビン。

よく見るとくまみの顔が良く見える。


「キレイだ。お前の顔が良く見えるぞ、くまみ」


俺がそう褒めると、くまみの目が一瞬にキレイに見えた。


俺は最初に作られて、人から人へと渡ったぬいぐるみ。

ボロボロになるまで遊ばれたぬいぐるみ。

くまみが出来上がって、俺たちと一緒に大人になるまで遊ばれたぬいぐるみ。

俺とくまみが捨てられたと感じてしまったその時から、俺の心はキレイじゃなかった。

でもくまみの心は俺とは違う。

とてもキレイな心をしているんだ。このビンのように。透き通ってて。


「なぁ、くまみ。せっかくだし、この中に何か入れようか」

「うん、わかったぁ」


くまみは嬉しそうな声で言うと、ビンの中に貝殻を入れ始めた。









・・・・・・。

俺の心のビンはどこにあるんだろう。

おそらく俺の心は海の底へと、

はるか遠くに、深く・・・しずんでしまったようだ。
















「お兄ちゃん」


くまみの声でへろくまは目を覚ます。


「あっ、くまみ、どうした」


「お兄ちゃん、うさぎさんが遊ぼうって。海が見える場所を見つけたから一緒に行こうって」


つぎはぎうさぎが言うには遠くからでも見られる景色を見つけたようだ。

へろくまはそううなずく。


「わかった、うさぎさんにさそわれたんなら俺も一緒に行こう。心配だからな」


「わかった。みんなも一緒に」


「おう」


へろくまは起き上がって、くまみの手を取るのだった。



おしまい

つぎはぎぐるみぃSTORY

このサイトは「つぎはぎぐるみぃ」の日常の物語を描いたものです。

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