バレンタイン・クッキング
バレンタインの前日。
くまみはつぎはぎうさぎの家に来ていた。
「どうした、くまみちゃん」
つぎはぎうさぎがキョトンとしながら言う。
「あのね。明日、バレンタインでしょ?」
「ああ、そうだな」
「だから去年とは違うチョコを作りたいんだけど・・・」
「くまみちゃん・・・」
つぎはぎうさぎは少しだけ考える。
「トリュフはどうだ」
「トリュ・・・フ・・・・・?」
「ああ、簡単だし、どうだろう」
つぎはぎうさぎは少々不安げに思いながらもそう言ったが、くまみはしばらくして頷いた。
「わかった。簡単なら作ってみる」
「ほっ、良かった。それじゃあ、家に入ってくれ」
つぎはぎうさぎはそう言うと、くまみを部屋に招き入れた。
ピンクのエプロンを身につけたくまみは、つぎはぎうさぎに教えた通り、まず最初にチョコレートをみじん切りにしてボウルに入れ、湯煎にかける。
チョコレートが溶け出してきたら生クリームを入れる。
「チョコレートにツヤが出てきたら少し固まる程度に冷まそう。その間に入れるラッピングを選ぼうな」
「わかったよ。つぎはぎうさぎさん」
くまみは言われた通りにボウルを小さな冷蔵庫に入れた。
つぎはぎうさぎは色とりどりの袋と箱を持ってきた。
「人間の街でバレンタイン専用の袋とか雑貨に売ってあってね。くまみちゃんの好みで選んでいいよ」
「わかった。くまみは・・・ピンクが好きだから・・・ピンクの袋に赤いリボンでいいかな」
「ああ、いいな。トリュフだからな。箱に入れるとかわいいよ」
つぎはぎうさぎとくまみは楽しげに話しているうちに30分が経った。
少し固まったチョコレートを、くまみはトレーに一口サイズで分け始めた。
「これでトリュフができるの?」
くまみが尋ねる。
「まだだよ。くまみちゃん、これからまた冷蔵庫に入れて30分冷やすんだ」
つぎはぎうさぎはそう言うと、くまみは小さな冷蔵庫に入れて冷ました。
それから30分。
少しだけ固まった一口サイズのチョコレートを丸めて、丸の形にする。
冷やしている間に溶かしたコーティング用チョコレートをかけた。
「これで綺麗なトリュフができた。あとは飾るだけだ」
「飾り・・・くまみ一人でやってみる」
くまみはそういうと、つぎはぎうさぎはキョトンとする。
「くまみちゃん一人で飾りを?・・・そうか、わかったよ」
「うん、ありがとう。うさぎさん。家に持ち帰って飾ってみる」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「それじゃあ、明日。うさぎさん」
くまみはそう言ってラッピングや、トレーごと自分の家まで持ち帰ったのだった。
・・・そして翌日、バレンタイン。
人間がバレンタインでそわそわしているころ。
ぐるみぃたちが住むゴミの島では・・・。
「フゥン、つぎはぎうさぎさん、くまみちゃんにトリュフの作り方を教えたんだ」
「そうだな。確かくまみちゃんが持ってくるって言ってたみたいだけど・・・」
がんたいねことつぎはぎうさぎがいつものように広場で話し合いをしていると、随分と大きな袋を抱えたくまみがやってきた。
「つぎはぎうさぎさん、がんたいねこさん・・・」
くまみは袋からトリュフが入っているであろう、ピンクの袋を取り出すとそれを二人に渡した。
「昨日、うさぎさんに教わったトリュフ・・・お兄ちゃんに渡したら喜んで泣いてくれた」
「そ、そうか・・すごく上手にできたもんな。で、飾りはどんなんだ?」
つぎはぎうさぎがそういうと、くまみはピンクの袋から赤い箱を取り出し、トリュフを見せた。
そのトリュフは全部の種類のデコレーションをしたのか、とても派手なトリュフだった。
「こ・・・これは・・・」
つぎはぎうさぎとがんたいねこは派手すぎるトリュフを見て唖然とする。
「くまみ・・・どれを飾ればいいかわかんなかったから、全部使った。どうかな・・」
くまみが不安げでいうと、つぎはぎうさぎはその姿に頷いた。
「ああ、いい出来栄えだ。食べてもいいんだな」
つぎはぎうさぎはそう言ってトリュフを食べると、口の中のトリュフがゆっくりととろけていく。
「・・・・ああ、美味しいよ。上手に作ったよな。くまみちゃん、すごいぞ」
つぎはぎうさぎがそういうと、がんたいねこも「僕も食べる」と言わんばかりにトリュフを頬張った。
「ん?んー!美味しいよ!くまみちゃん!これ、へろくまさんが泣いて喜ぶのがよくわかるね!」
がんたいねこがいうと、くまみの目が優しくなったのがよくわかった。
喜んでいる証拠だ。
「くまみ・・嬉しい、あの、私・・・来年も作るよ。また教えてくれる?」
くまみがそういうと、つぎはぎうさぎは「もちろん、また教えてあげるよ」と言ったのだった。
その頃、くまみにもらったぬいぬいは案の定、上手にできたトリュフを食べるかどうか迷っていた・・・・。
おしまい
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